2013年3月19日火曜日

虚血性心疾患の危険因子を知ろう 1


心疾患を持つ方がより良く暮らしていくお手伝いをしたり、個々にあわせた心疾患マネージメントの方法をアドバイス出来るようホームページto Care for Your Heartを作成しました。こちらのブログでは心疾患に関連した情報を発信していけたらと思っています。

日本の虚血性心疾患の発症率や死亡率は欧米に比べると低いですが人口数で見ると日本では80万8000人もの方が虚血性心疾患を持ち暮らしているようです(厚生労働省平成20年調査)。発症後は慢性疾患として一生つき合っていく病気であり決して見過ごされてはならない疾患だと思います。

まずは予防や早期発見に焦点をあて、何回かに分けて虚血性心疾患の危険因子について書き留めていこうと考えています。


虚血性心疾患の危険因子
これらの危険因子が1つあるからといって将来必ず虚血性心疾患になるとは限りませんし、組み合わせにより反対にリスクが かなり高くなることがあります。

そのためオーストラリアでは虚血性心疾患のリスクを単に独立した「高血圧」「高コレステロール血症」という因子のみで判断するのではなく、研究的エビデンスを基にした因子の掛け合わせによる指標で決定する
      absolute CVD risk (虚血性心疾患の発症の絶対リスク)
を開発し使用しています。

一般の方が簡単に虚血性心疾患の発症の絶対リスクをチェック出来るようにこちらが作られています。

日本でもJALS急性心筋梗塞リスクスコアシートに数値を入力するとチェック出来るようです。関連記事はこちら

ここでの「絶対リスク」とは5年以内に虚血性心疾患を発症する可能性を数的に示したものです。オーストラリアでは下記のように記されています。

*Low Risk (低リスク)5年以内の発症率が10%以下 
2年毎のチェック要
*Moderate Risk (中等度リスク)5年以内の発症率が10-15% 
半年から1年毎のチェック要
*High Risk(高リスク)5年以内の発症率が15%を超える 
医師の指示に従う

もう少し視覚的に解りやすく表すと下記のような図になります。
オーストラリアの例であり日本にそのまま指標をあてはめることは出来ませんので参考程度にして下さい。とても解りやすいです。こちら参照に


年齢、糖尿病の有無、喫煙歴、性別、血圧、総コレステロールと善玉コレステロールの比率から5年以内の虚血性心疾患発症率を色分けで示しています。上記は糖尿病の無い方が使用する指標です。下記は糖尿病を持つ方へ使用する指標です。


糖尿病を持つと虚血性疾患をかなり高い割合で発症することが一目瞭然です。

この指標はFramingham Risk Equationに基づいて作られています。

フラミングハム(Framingham)の心臓研究所のことを知らない人は循環器医療に携わる者の中にはいないのでは?というぐらい有名な数々の心疾患に関するエビデンスを生み出している歴史ある研究所です。フラミングハムの研究データーを使い虚血性心疾患のリスクを方式に表したものが Framingham Risk Equationです。

Framingham Risk Equationはあくまでもアメリカ人のデーターが基盤となっており、この指標を他の国に当てはめた場合、誤差が出ることもあるようです。


イギリスではフラミングハムの指標ではリスクが過小評価されるということでQRISK
® calculatorを独自に開発し使用しているようです。インドや女性を対象にした研究でも過小評価されたという報告が上がっています。

日本にではすでに日本独自の指標が開発されているのでしょうか?

ご存知の方がいましたらぜひ教えて下さい。

虚血性心疾患の危険因子を知ろう 2では、上記に示した意外の危険因子と、危険因子のチェックなしで自動的に虚血性心疾患の高いリスク郡に入る方について記載します。